テレワーク主体の現代における人材育成の課題とは? -ドコモ・システムズ人事育成部長インタビュー

仮想デスクトップコラム
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  • 2022.04.12

テレワーク主体の現代における人材育成の課題とは? -ドコモ・システムズ人事育成部長インタビュー

新型コロナウイルスの流行にともない、テレワークが当たり前になってきている現状。オンラインでの勤務が主体になったことで、人材育成も大きな変化を迫られています。テレワークでの人材育成における課題と工夫とは? ドコモ・システムズ人事育成部長・麻生知章に話を聞きました。


<プロフィール>

麻生知章

2014年7月 NTTドコモ 人事部 人事制度担当部長

2018年7月 NTTドコモ 東海支社 企画総務部長

2021年7月 現職

STC診断

全社テレワーク化により環境面とルール面を改善

コロナ禍で突然の全社テレワーク。色々と対応が大変だったのではないでしょうか?

ドコモグループではデジタルワーク化を進めており、在宅勤務が実施できる環境が整っていたので、10年ほど前にワークライフバランスの観点からテレワーク制度を開始しました。
仕事と生活のバランスをとらえたテレワーク制度でしたので、今回の新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言やまん延防止を受けた全グループ一斉のテレワークに切り替えた際には、これまでのテレワークのルールやシステム環境では対応できず、さまざまな面で不十分な点が浮き彫りになりました。

まず大変だったのは環境面です。自宅で業務ができるように仮想デスクトップや業務用電話などリモートで働ける環境は元々あったものの、それまでのテレワークは出張時や家庭の事情など特別なケースでのみ使用されていました。社員の80%が常時リモートで働く環境を想定していなかったので、仮想デスクトップがなかなか繋がらなくなったり、動作が遅くなったりしました。

社員は会社にいるのと同じ環境を求めますから、ちょっとした不便があると、「仕事ができない」という声が上がることも。新型コロナ禍で強制的に在宅勤務が始まったので、環境面での最初の混乱がありました。

同時に、制度の改善も迫られました。それまでのテレワークは月8回という回数制限があり、また、テレワーク実施の際には、事前に上司との仕事内容の意識合わせや、働く場所、セキュリティ環境など1つ1つ申請と承認を得るプロセスが必要でした。全社的にテレワークが主体になると、セキュリティは保持しつつも手続きの負担を軽減しないとやっていられませんよね。さらに、勤務時間を調整しやすいようにフレックス勤務のコアタイムを無くしたり、分断勤務ができるようにしたり、通勤定期券をやめて出社時だけ申請するようにしたりと、この1年間でルール面を大幅に見直しました。

これらの見直しは主にITで解決しました。オンラインでセキュアな環境を構築し、個々の通勤状況やテレワーク実態はスケジューラーで管理。複雑な勤務形態もシステムを改修し対応できるようにしています。

研修やOJTのオンライン化で一苦労

人材育成面ではどのような壁にぶつかりましたか?

テレワークで働く環境が変化したことにより、個人の特性とマネージメントの方法に変化を感じました。より難しい仕事へステップアップを考える社員への研修をオンライン環境でどうやって実現するのか、対面が難しい中で転勤者や新入社員など初めてその職場に来た人が業務とチームに馴染むにはどうやってOJTを進めていくのかの2点が次なる課題と感じました。
ステップアップ研修では対面で集合して行うのが前提でしたが、新型コロナ禍ではオンラインでの研修を標準化しました。

以前は、ITベンダー各社のオープン型研修を活用し、「専門力向上研修」として提供していましたが、全面的なテレワーク開始当初では対面集合の開催手法しかなく、自社で提供できる講師や設備等の環境もなかったため、同研修を社員に提供できない期間が発生してしまいました。現在はほぼすべてのオープン型研修をオンライン化しましたが、オンライン環境は整えたものの、社員がWEBでの研修参加に慣れるのにも時間がかかりました。

OJTはなかなか難しいところです。こればかりは対面が一番いいのかなと感じています。とくに新入社員はとくに、最初は対面がいいと思います。対面とオンラインの一番の違いは、お互いの双方向性。説明と質問のやりとりがうまくいけば、おそらくオンラインでも対面と同じくらいのOJTの効果は出ると思います。教えるほうも相手が理解しているかどうかわからないと教えづらいし、生徒のほうも不明点をすぐ質問できないと理解しにくい。感情や理解度をより深く知り合えるように、コミュニケーションの円滑さと双方向性を高める工夫が必要ですね。今では「1on1」面談の研修を開催してメンバーとの雑談を交えたコミュニケーションの推奨しているところで、成果はこれからと認識しています。

自社開発したWeb会議「letaria」で「1on1」を実施しているようす

新入社員が入社後に対面集合できる機会が激減したのも困りものでした。WEB会議ツールを用いて顔の見える対話環境は用意したのですが、人事育成部門とのコミュニケーション機会が減少していると感じました。都合がつけばいつでも参加できるような業務外での懇親会をオンライン開催するなどして、人事育成部門とのつながりを強め、業務以外での問題や課題を認識する機会を増やし、新入社員の不安の把握と解消に苦労しました。

テレワーク常態化で変化した人材育成とさまざまな工夫

コロナ禍を経て、人材育成にはどのような変化が起こりましたか?

受講者側も研修はオンラインで参加するものだという前提で考えるようになったことと、オンラインでのコミュニケーションが増加したことが大きな変化です。

当社では社員向けに提供・実施するすべての研修(技術スキル向上やコンセプチュアルスキル向上)を、オンラインで実施できるように整えました。自組織で企画から運営を行う研修としては、管理職向けの信頼関係構築研修や、若手社員向けのコミュニケーションスキル向上研修等があります。

研修効果を高めるために、どのような工夫をしていますか?

講師と受講生のインタラクティブな部分や、受講生同士のコミュニケーションは、研修効果を上げる大きな要因だと思っています。講師からテクニカルな知識を吸収するのはもちろんですが、それに加えその後活きるのは、受講生同士のコミュニケーションの中での気づきや、そこでできた人脈だと思うので、オンラインでも対面集合による研修時と変わらぬ環境が作れるように工夫しています。

たとえば講師側だと、受講生が理解しているかどうかの反応をリアクションマークで確認し、質問をチャットで受けるようにしたり、受講生が資料を読み戻りたいときのために、自分の権限で操作できるようにしたり。受講生同士のディスカッションやロールプレイは、WEB会議ツールで小ミーティング環境を作って行うのですが、小規模の人数の中でのコミュニケーションなので、そこで互いの人となりが知れたりもするのかなと思っています。

やっぱり対面とオンラインの使い分けが大事なのかなと思います。出社するのがいいわけでもなく、在宅でオンライン勤務が常にいいわけでもなく。オンラインで対面と同じようなことができるのを目指すのか、オンラインはオンラインで特性を活かしたことをやっていくのか、業務の内容によって、最適なワークスタイルの使い分けですね。

テレワーク導入によって、逆に良かったと思う変化はありますか?

時間や距離を超えて対応できるのが、テレワークの一番いい点だと思っています。会議が重なって移動はちょっと無理だなという時も、オンラインならすぐ切り替えができて参加しやすい。

研修も、対面集合型だと移動時間を含めたスケジュール調整が必要で、移動すること自体も負担やコストがかかります。出張して研修の現場まで行くとなると、なかなかハードルが高いかもしれませんが、そういう障壁がオンラインで下がるということもあるのかなと。手軽に参加できるぶん、今まで触れ合うことがなかった人たちとも触れ合いやすくなりますよね。

テレワーク下の人材育成に大事なこと

テレワークが継続される中、今後はどのような人材育成を行うことが大事だと考えますか?

テレワークの継続だけでなく、今後もオンライン型研修の実施は維持したいと考えています。負担が少なく、柔軟なタイミングで参加できるというオンラインのメリットを活かしつつ、対面とオンラインをバランスよく取り入れながら、社員がきちんと成長できるようにしていきたいと考えています。

オンラインでの研修効果を高めるために欠かせないことは、セキュアなオンライン環境の整備とITツールの進化です。講師と受講生、受講生同士のインタラクティブな環境をITツールで実現していく必要があります。

当社としては、IT環境でテレワークする際には、セキュリティを一番に考えています。研修に限らず、テレワークで行うすべての業務に共通しますが、セキュリティが担保できないと仕事にならないですよね。セキュリティの対策ももちろん進化させていく必要があります。

ただ、仮想デスクトップは非常にセキュリティ性が高い一方で、やや重たいところもあり、実際の業務における使い勝手とセキュリティを両立させることも必要になっているので、ゼロトラストの考えを取り入れたゼロスペース(仮称)の製品化に向けた検証も始めました。セキュリティと使いやすさが両立できるよう、当社では常にいろいろな観点からデジタルワーク(DX)を進化をさせています。

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